Re.start
絶対絶命のピンチ
告白タイムが終わると、再び会場はステージへと戻された。
次は、毎年恒例の借り物競争。
お題は毎回違うけど、後夜祭実行委員が仕切っているこのイベントは毎年生徒達に大好評だ。
笑顔で締め括りたいという実行委員側の想いも伝わってくる。
借り物競争とは…。
お題に沿った物を五分以内に誰かから借りて、ステージ上に持って行かなければならない。
先着10名様限定でステージに上がれるというルール。
このイベントは基本早い者勝ち。
誰でも気軽に参加出来るので、生徒達もここぞとばかりに気合いが入っている。
借り物競走は、生徒達の視線が一旦ステージから外されるので、私は二人きりで居るところが見つからないようにこの場から離れる事にした。
「先生。借り物競走始まっちゃったから、私…もう戻るね。」
「菊池…。実は話があるんだけど…。」
「えっ…。なぁに?」
梓は教室から離れようとして足を廊下の方に向けていたが、高梨に呼び止められて振り返ると…。
突然、廊下から誰かが物凄い勢いでバタバタと足音を立てながら自分達の方へ向かって走って来る音がした。
「えっ…、嘘っ……。」
梓達は足音が耳に入った途端、一気に緊迫した空気に包まれると、逼迫した表情で互いの顔を見合わせた。
どうしよ…。
先生と二人きりでいた所が、誰かに見付かっちゃう!
梓は危機感と恐怖により足がすくんでしまい、離れなきゃいけないと思う意思とは対照的に足が思うように動けなくなっていた。