Re.start

久しぶりの部屋


蓮は、私達が別れた事を両親に伝えていないのかな。
久しぶりに姿を現した私を何の疑いもなく笑顔で迎えてくれたし…。



梓は玄関を上がった後、先導する蓮の後ろを歩き二階の部屋に向かった。



この家は半年前に来たのが最後だった。
たった半年なのに、ものすごく懐かしい気がする。

だけど、先生とのデートをすっぽかして一体何をやってるんだろう。



梓はふと我に返るが、スマホは自宅に置いたまま。
高梨との連絡手段がシャットアウトされている現実に胸を痛める。



蓮は部屋の前に立つと、ドアノブを引いて扉を開けた。



「入って。」

「あ…、うん。」



扉の奥は久しぶりの蓮の部屋。
もう二度と足を踏み入れる事はないと思っていた。



久しぶりに蓮の部屋に来たけど。
およそ半年ぶりなんだけど。

蓮の部屋は。
ホントに…ホントに………。



汚っっ……。




足の踏み場もないほどの光景は、ベッドに座れと言わんばかりに物が散乱している。



だけど、ベッドに上がればもうおしまい。
蓮は猛獣のように襲いかかってくるだろう。
元カノの私には野獣化した彼の光景が目に浮かぶ。


ベッドに触れた時点で彼の思惑通り。
そこに、私の意思は挟まれないはずだ。



まさか……。
これが奴の作戦?

しかも、私を家まで迎えに来る時間があるのなら、この汚ったない部屋を先に片付ければいいのに。
常識的に考えても、人を招き入れるなら部屋くらい片付けるはず。

とりあえず、ベッドに上がらなくて済むよう居場所を確保しなきゃ。
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