Macaron Marriage
「萌音はさ、二人の再会は大学の時だって思ってる?」
「えっ……思ってるよ。まさか違うの?」

 驚いたように翔の顔を見上げると、彼はニヤニヤしながら萌音にキスをした。

「実はそれより前に一度会って話してるんだ」
「……いつ?」
「実はね、最初の顔合わせの時に日本庭園で話したんだよ」

 顔合わせ……日本庭園……すると一つの記憶が蘇ってくる。それから青ざめた顔であんぐりと口を開けてしまう。

「ちょ、ちょっと待って……! だ、だってあの時に日本庭園で話した人って……」
「『逃げちゃえばどうです? あの雲みたいに』」

 その言葉を聞いて唖然とする。それから不思議そうに尋ねた。

「……どうして私に逃げろなんて言ったの?」
「ん? まぁなんていうか、あの時はまだ時期じゃないって思ったんだ。俺も萌音も夢を叶えてないし、今結婚なんかしたら後悔するような気がしてさ。それに萌音は俺の名前も聞いてないっていうし、それならお互い自由にやるのもいいのかなって」

 その時萌音の頭に、元基に言われた言葉が思い出される。

『大丈夫大丈夫。翔を信じてください。ちゃんとハッピーエンドになりますから。何てったって、何度もあなたの背中を押してきた張本人ですからね』

 あの時は何のことかさっぱりわからなかったけど、今ならわかる。私に結婚が迫るたびに、翔さんが何かしら手を貸してくれていたんだ。

「翔さんはずっと私を見守ってくれていたのね……ありがとう……」
「萌音を見てると、やる気が出るんだ。俺にももっとやれることがあるんじゃないかって、前に進もうって思える。これからは萌音と一緒に進んでいきたいって思うんだ」
「元基さんには全てお見通しだったわけね」
「一番始めからね。だとしても……俺はもう萌音を逃すつもりはないから」
「……大丈夫。逃げたりなんかしないから……でもちゃんと捕まえていてね」

 翔は嬉しそうに萌音の頬を撫でてからキスをする。

「ちゃんとハッピーエンドになったかな?」

 問いかけた翔に、萌音は不敵な笑みを浮かべて首を横に振る。

「まだ終わりじゃないでしょ? 始まったばかりだもの。これからたくさんの幸せを二人で探して行こう」
「あはは! 本当にその通りだね。でもとりあえず第一章はハッピーで締められそうかな?」
「もちろん!」

 恋をしないはずだった。だけどあなたに恋をしないなんて無理な話だったの。だって私の心はずっと昔からあなたに囚われていて、あなた以外の人と恋をする必要はないって思っていたから。

 誰よりも特別なあなたと、マカロンのように甘くて鮮やかな時間を過ごしていきたい。

 私の心を溶かせるのはあなただけ……あなたに溶かされ、私は愛を知ったの。
< 130 / 130 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:49

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

ハイヒールの魔法

総文字数/21,351

恋愛(純愛)28ページ

ベリーズカフェラブストーリー大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
学生時代に受けた 心の傷が癒えることなく 恋とは無縁の生活を送ってきた瀬名 恋はもちろん 結婚なんて出来るわけがない── そんな時に参列した友人の結婚式 愛し合う二人の姿をみていると 胸が苦しくなった 結婚式の後 終電に間に合うように走っていると パンプスのヒールが取れてしまう そして終電の時間が過ぎ 何もかもが悲観的に思えた瀬名は 衝動的にパンプスを放り投げてしまう しかもパンプスを届けてくれた男性から 浴びせられた失礼な言葉 『イケメンのくせに女装が趣味なんだ』 そして瀬名は 男性に平手打ちを喰らわせると 走って逃げ出した── 三木谷瀬名(27)小児科医 × 樫村徹平(29) 最悪な出会いから始まる 魔法のような恋のお話 *エブリスタ様にも投稿しています。
妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜

総文字数/83,851

恋愛(純愛)88ページ

マカロン文庫新人コンテストエントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
始まりは高校三年生の時 廃部寸前の文芸部に 突然やってきたのは 学年一の優等生のあなた 住む世界が違う私たち だけど読書と顧問の先生が 二人の想いを繋いでいく あの日が訪れるまでは── すれ違ったまま卒業した二人 二人が再会したのは 恩師である顧問の先生の葬儀の日だった 山之内 花梨(26)絵本作家 × 菱川 北斗(26)外科医 会いたくないと 逃げようとする花梨 きちんと話をしようと 追いかける北斗 二人の想いが交差した時 再び恋が動き始める── *大好きな作家友だちのオガタカイさまのイラストに感化されて執筆しました♡ *エブリスタにも投稿しています。
甘えたがりのランチタイム

総文字数/28,939

恋愛(オフィスラブ)29ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
終電に間に合わなくて 近頃は帰ってこない日が増えた彼に 茉莉花は不安を覚え始めていたーー そんな時 趣味で通っている料理教室に 同期の風見裕翔が入ってくる 料理を通じて仲良くなっていく二人 ある日 たまたま入ろうとしたカフェで 恋人から別れ話を切り出されていた 裕翔と遭遇 気付いた様子の彼を放っておけなくて 茉莉花は彼を食事に誘った 西園茉莉花(25) × 風見裕翔(25) 裕翔の失恋がきっかけで 仲が深まった二人 そして茉莉花にも転機が訪れるーー *エブリスタにも投稿しています。 *表紙はガーリードロップ様にお借りしています。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop