Macaron Marriage
* * * *

 萌音は持ち込まれたドレスのスカートに、ボリュームを持たせるためのソフトチュールを重ねて付ける。そして一度マネキンに着せ、バランスを見ていた。

 これは新婦がアメリカに行った時に買ったものらしいが、デザインがシンプル過ぎるから、予算内で可愛くして欲しいとリクエストをもらっていた。

 確かにスカートのレースは可愛いけどシンプルなドレス。新婦の方はどちらかと言うと可愛い印象だったから、このままでは物足りないのは納得がいく。

 とりあえず身ごろを分解して、上身ごろにも大きめの花のレースを重ねて縫い付ける。予算内で可愛く仕上げるために、使い勝手の良いポリエステルのレースを選んだ。それからスカートもふんわりさせ、そこに大きいバラのレーステープを上見ごろやスカートにランダムに配置していくと、新婦のイメージにピッタリな可愛らしいものに変化した。

 ようやく納得のいく仕上がりになり、萌音の顔に笑顔が戻る。

 あとは少しビーズとかを付けたいな……ぶつぶつ独り言を呟きながら作業に没頭していると、ドアの近くに誰かが立っているのが目に入る。

 華子かと思って振り返った萌音は、目を見開いて凍りついた。そこにいたのは、楽しそうに笑顔を浮かべる翔だったのだ。

「か、翔さん⁈ あのっ、いつからそこに……?」
「確か二十分位前でしたかね、華子さん」
「えぇ、正確には二十四分ですが」
「は、華子さん⁈ なんで声かけてくれないの〜!」
「私がお願いしたんです。真剣にドレス作りに取り組む萌音さんを見たいからって。あの、中に入ってもいいですか?」
「あっ、はいっ、どうぞ! あまり広くないんですが……」

 萌音が答えるのと同時に、華子は頭を下げて部屋の前からいなくなった。

「あはは! ありがとうございます。でもこれくらいの広さの方がやりやすいんじゃないんですか?」

 これから仕事に行くのだろうか。スーツ姿の翔に思わず見惚れてしまった。

 翔は部屋に入ると、興味津々という様子で中をゆっくりと眺めて回る。レースやビーズの種類に感嘆の声をあげたり、マネキンが着ているドレスを見ながら嬉しそうに目を細めた。

「そうなんです。欲しいものにすぐに手が届くし、なかなか絶妙な広さだったりするんですよ」
「大好きな物に囲まれていて、ここはまるで萌音さんのお城みたいですね」
「確かにそうかもしれません」

 翔の言葉に大きく頷くとともに、萌音の心に温かい風が吹き抜けていった。
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