Macaron Marriage
* * * *

 元々リビングだったこの部屋には大きなソファが置いてあり、打ち合わせの部屋としても使用していた。壁沿いにはハンガーラックと十着程のドレスと全身鏡、その前には着替えやすいよう大きめのラグマットを敷いた。

 ハンガーラックのそばへと案内すると、翔は興味津々という顔でドレスを眺める。

「手にとって見ていただいて大丈夫ですよ。元々向こうにいる時もリメイクの仕事の方が多くて、だからこのお店もどちらかといえばリメイクとセミオーダーを中心にやっていくつもりだったんです。でも日本ってレンタルの需要が高いじゃないですか。それなら今まで作った物を貸し出したらどうかなって」

 萌音の話を聞きながら、翔はドレスを手に取る。

「クラシックなデザインですね。派手すぎず、それでいて存在感がある。こちらはお色直し用ですか?」

 萌音は頷いた。ハンガーラックの左側にウエディングドレス、右側には昔話に出て来るような、レトロなヴィンテージ風のデザインのドレスが掛けてある。

「需要があるかわからなかったけど、ありがたいことにこういうドレスが好きって言ってくださる方もいるんです」
「……すごく素敵ですよ。萌音さんらしい、歴史や文化、それに現代のテイストをミックスしたデザインがいいですね。まるでどこかの舞台衣裳のような感じもしますよ」

 翔の言葉に、萌音は嬉しそうに瞳を輝かせた。

「あ、ありがとうございます……! っていうか、舞台衣裳の話を覚えていてくれたなんて感激」

 頬を赤く染めて照れたように笑う萌音の頭に、翔はそっと手を載せる。
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