インディゴ・ノーブル ~深海の果て~
今日もよく晴れている。
暑すぎず寒くもない過ごしやすさは、初夏ならではの快適を連れてくる。
「はぁ…」
気まずそうに走り去る彼の背中を見ながら、息を吐く。
…快適なはずなのに、居心地はよくない。悪いことをしてしまったみたいだ。
――…高校生活最後の一年という事実に、ようやく実感がわいてきた。
周りもそれぞれの進路に向けた受験モードになっていく。もちろんわたしも。
…恋愛と学業、どちらもなんて器用なこと、わたしには出来そうにない。
「あ、れのちん」
「…楓莉(ふうり)、わたしは“れの”じゃなくて“れいの”だってば」
「あはっ、入学した時かられのちんって呼んでるのにー」
「……確かに」
「あはっ!!相当疲れたんだねぇ」
教室に戻ると、わたしの席の前でひらひらと軽やかに手を振る友人の姿がある。
待っていてくれたのだと気付くまで、時間はかからなかった。
彼女は佐々楓莉(ささふうり)。学校で一番仲の良い友人だ。