放課後の音楽室で
第4章 励ましの音
『複雑骨折です』

ベットの中で、今日医者に言われた言葉を繰り返す。

明日…手術か。

練習の合間の休憩時間、歩きながらよそ見をしていた俺は、変な転び方をして、手首を骨折。

痛み止め飲んでるけど、結構ズキズキどくどくいってるし。

せっかくレギュラーとれたのに、また振り出しか…。

ブッブッブッ

佐久間…?

メールが届いて、スマホの画面をタッチする。

〝怪我したって聞いたけど…大丈夫?〟

怜さんから聞いたのかな…。

〝うん、大丈夫。明日手術だよ〟

〝手術って…ひどい怪我?〟

〝首複雑骨折。治ればまた野球できるから〟

自分で打ちながら、これはもう自分自身への言い聞かせだな、と思った。

〝私に、何かできることないかな?〟

佐久間のメールに胸がぎゅっと締め付けられる。

特別何かをして欲しいわけでも、励ましの言葉をかけて欲しいわけでもない。

ただ…

〝いつも通りに、笑って欲しい〟

それだけだと思った。それだけで、十分だった。

夏の大会、どう考えても無理だよな…。

スマホを枕元に置いて、天井を見上げる。

なんで、あのときよそ見なんて…。




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