放課後の音楽室で
第5章 文化祭
「佐久間さん」

廊下で呼び止められて、後ろを振り向く。立っていたのは、3年生の男女3人。

「佐久間さん、ピアノ上手だって聞いたけど…耳コピできる人?」

「…はい。ただ、楽譜見ながらじゃないので正確ではないです」

「オッケーオッケー。単刀直入に言うと、今年の文化祭、俺らのバンドでピアノ弾いて欲しいんだよね」

「えっ…」

「アレンジ行ける?」

「ちょっとなら…。って、いえいえ、でもそんな大役無理です」

3年生と一緒に、人前でなんて絶対に無理。

「絶対楽しいから!お願い!」

3年生が私の前で手を合わせてお願いしている光景は、他の生徒にどう映っているのだろう。

「せ、先輩方、顔を上げてください」

「どうしたの?佐久間」

「あっ、上田くん…それが…」

ちょうど通りかかった上田くんに、ことの経緯を話す。

「そっか…。俺も佐久間のピアノ上手いの知ってるけど…佐久間は気が乗らないんだ?」

「気が乗らないと言うか…バンドで弾いたことないし」

そう言うと、上田くんはしばらく考え込んで、口を開いた。

「一度、一緒に弾いてみて、それから返事決めれば?先輩方、それでもいいですか?」

「もちろん、チャンスがあるなら!」

「だって。どうする?」

上田くんは私の方を振り向いてニコッと笑った。

「じゃあ、試しに…」

「やった。早速だけど、今日放課後合わせられる?

「はい。って、どこでですか?」

軽音部とかなかったはずだけど…。

「駅前近くの防音設備あるところでいつも練習してるんだ。いい?」

「はい」

そんな本格的な場所で練習してる人達なんだ。

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