放課後の音楽室で
第6章 輝く姿
「今日、帰り遅かったのね」

家に帰って夜ご飯を食べていると、母さんが聞いてきた。

「うん…文化祭の準備」

あながち、間違いではない。

そう言い聞かせて、あつあつのトンカツにソースをかける。

「あら、じゃあしばらくはこの時間?」

「たぶん」

バンドの練習、平日毎日やるって言ってたし。

ふと、帰り際に、菊池先輩に耳打ちされたことを思い出す。

『すぐにってわけじゃないけど、俺、佐久間さんに本気になるかもよ?』

今日あった先輩に、まさかそんなことを言われるなんて思っても見なくて、結構動揺した。

でも、なんでわざわざ俺に?つーか、なんで俺動揺してんの?

トンカツにかぶりつきながら、そう思った。

菊池先輩、真面目そうだし、優しさも滲み出てたし。佐久間と音楽で繋がってるし。お似合いって言えばお似合い。

だけど…

すげーモヤモヤする。トンカツで胃もたれでもしたか?

味噌汁を飲んで、少し胃を休める。

それにしても、佐久間の才能が、どんどん認められるって、なんか嬉しいよな。

今日、偶然会った怜さんに、佐久間が3年生にスカウトされてたって話したら、すごく嬉しそうにしてたな。

昔の佐久間からじゃ考えられないことだもんな。

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