放課後の音楽室で
第8章 数センチ
自分の部屋のベットで横になりながら、俺は今スマホで女子の好きそうなプレゼントを検索している。

開けた窓からは、春らしい風がふわっと舞い込んでくる。

明後日は、佐久間の17才の誕生日。別にまだ付き合ってるわけじゃないけど、想いは一緒だから、何かしてあげたいとは思っていた。

でも、ギリギリになっても何がいいのか思い浮かばない。

兄ちゃんに相談しようかとも思ったけど、色々探られそうで、やっぱりやめた。

「…何あげたら喜ぶんだろう」

とりあえず、雑貨屋にでも行ってみるか…。











「あっ」

「あっ」

偶然にも、雑貨屋の前で怜さんと遭遇する。こんな所に似合わなそうな俺が来ていたことと、佐久間の誕生日が近いことが一致したらしく、怜さんはすぐに状況を察した様子で口を開いた。

「…文乃のプレゼント?」

さすが。

「うん。もしかして、怜さんも?」

「うん。何買うの?」

「いや、全然思いつかなくて、とりあえず来てみただけ」

正直にそう言うと、怜さんは仕方なさそうな表情で俺を手招きして反対側の棚まで連れてきた。

「文乃、最近髪の毛伸ばしてるでしょ?」

たしかに。今まで同じくらいの長さにしていたのに、最近は結構長くしてる。

「つい最近、かわいいヘアアクセサリー欲しいなって言ってたわよ?」

「本当、助かる」

目の前には、何種類ものヘアアクセサリーが置いてある。

佐久間を思い浮かべて、どれがいいのか考え始めると、

「私、別のとこ見にいくから。じゃあね」

怜さんは手を振りながらそう言った。

< 43 / 120 >

この作品をシェア

pagetop