放課後の音楽室で
第10章 両親のこと
コンコン

部屋の扉をノックする音が聞こえて、ベットに横になっていた私は、体を起こす。

「文乃さん。ご飯出来ましたよ」

「…今、行きます」

新田さんに返事をして、鏡で髪の毛を軽く整える。

鏡に映った、自分の顔を見て、ため息が出る。泣きすぎて腫れた目にそっと手を当てた。

昨日、お父さんに自分の気持ちをぶつけた。どうして医学部に進みたいと思ったのか、お母さんのことも含めて伝えた。そして、結婚についての事も。断りたいと、初めて自分の意見を話した。

父は顔を真っ赤にして、鬼のような形相で、言い放った。

「頭を冷やしなさい。それまで家から一歩も出るな」

私の言葉が何も届かなかったことがショックだった。

どうして、私の気持ちが少しでも届かないの?

やっぱり、実の娘じゃ無いから、自分の利益のためにしか、私の存在意義ってないの?

考えれば考えるほど苦しくなって、私は一晩中泣き続けた。

上田くんと連絡を取れないように、スマホも没収されてしまって、現状を伝える事もできない。

せっかく、背中押してくれたのに…。

身だしなみを軽く整えて、新田さんの用意してくれた朝ごはんを少しだけでも口に入れようと下へ降りた。


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