嫌われ夫は諦めない

「まったく、なんで俺がこんな役目をしなくちゃいけないんだよ……」

 ブツブツと文句を言いながら僻地にあるスティーズレン侯爵領を目指すのは、緑青の髪をなびかせた騎士のリディオだった。腰には剣を帯び、栗毛色の馬に乗っている。王宮騎士団に所属し、体つきは大きく騎士としては将来を有望されていた。

 だが、王妃セリーナは非情にもリディオに命じた。

「あのアホのイヴァーノの娘、シャスナ嬢と結婚しなさい」

 イヴァーノは以前、王妃セリーナの反感を買って僻地にあるスティーズレン領に追いやられたと聞いている。

 騎士ではあるがリディオは実は、王の側室腹の息子である。とはいっても将来は王籍を抜け、臣下に下りこのまま騎士として自由気ままに生きようと思っていた矢先に、義母でもある王妃に目をつけられてしまった。

「ついてねぇよなぁ」

 側室腹としても、王族の血を受け継ぐリディオを自由にしておくことはできない。どこか適当な貴族に縁づけられることは覚悟していたが、まさか僻地に送られるとは思ってもいなかった。それだけ王妃はリディオの母を憎んでいたのかもしれない。

「まったく、あばずれ令嬢と結婚することになるなら、もっと遊んでおけばよかった」

 はぁーっとため息をつくのも仕方ない。リディオの母は平民出身の側室だったから王子と言えど気ままに振る舞っていた。騎士団に入ってからは、肩ひじ張らない仲間と共に娼館へ繰り出すこともしょっちゅうだった。

 身体を繋げる相手には後腐れのない女を選んでいたつもりだが、王籍を抜けることを知らず中には王子妃を夢見る者もいた。まぁ、そうした女には他の騎士をあてがうなどして逃げていたが、どうやら年貢の納め時のようだ。

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