BODY BLOW ~Dr.剛の恋~
急いでいたせいか、15分で警察署に到着した。
駐車場に車を止めて、建物に入る。

2階に上がると、廊下の椅子に座っている鈴子と目が合った。

「鈴子。怪我は?」
「大丈夫」

所々打ち身の跡を残す鈴子が、笑顔を俺に向ける。
ひどいなあ。
女性に手を上げるなんて、

「病院には行ってないんだろう?」
「うん」
「なんで?ちゃんと調べてもらって診断書を出さないと」
診断書がなければ、起訴できないはず。

「宝は?」
近くに姿は無い。
「奥の部屋に」
鈴子の言葉の途中で、俺は会議室と書かれたドアに向かい、そしてドアを開けた。

「宝!」
勢いよく名前を呼んだ俺の目に入ってきたのは、

「剛」
驚く宝と、無表情なあの人。

なんで?
なんで、彼がここにいるんだ?

「じゃあ、俺はこれで。何かあれば連絡をして」
宝の元旦那が、沈黙を破って口を開いた。

「ありがとう」
淡々と答える宝。

ありがとう?
何で、彼が関わっているんだ?

「失礼します」
彼は俺に頭を下げると、部屋から出て行った。

「剛」
疲れ切った顔の宝が、俺を呼ぶ。
いつの間にか、すぐ隣まで寄ってきていた。

「どうしてここが分かったの?」

え?
「ああ、裕貴くんが病院に連絡をくれたんだ」

「病院へ?・・・ごめんなさい」
迷惑をかけてしまったと謝る宝。

「怪我は無い?」
「ええ。大丈夫」

大丈夫なはず無いだろう。
顔にいくつもの擦り傷が見えるし、手や足にも血がにじんでいる。
それに、少し動くたびに背中を痛がっている。

「宝、病院に行こう。俺もついて行くから」
精一杯穏やかに言った。

しかし、宝は首を横に振った。
< 33 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop