モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!
6
「はあ!?」
カロリーネが、顔を引き攣らせる。それでも私は続けた。
「以前のカロリーネ様って、取り巻きに囲まれていたけれど、真の信頼関係は無かった気がして。でも今は、本当に慕われている気がします」
図星だったのか、カロリーネは黙り込んだ。
「知った風な口を利くなって言われそうですけど……。カロリーネ様も色々大変だったんだろうなって、今となっては思うんです。そりゃ、あなたにはひどい仕打ちをされましたけど。でも、王族というお立場って、計り知れない苦労があることでしょう……」
「うるさいわね!」
カロリーネは一言そうわめいたが、ふとうつむいた。
「まあ、確かにそうね」
「……」
「いつかあなた、言ってたわよね。自然に振る舞えばいいのにって……。あの時は反発したけれど、今となっては思うの。過剰に気さくに振る舞わなければよかったのかなって。あざといと思われたから、グレゴールに好かれなかったのかしら……」
「けど、完全自然体で振る舞ったからいいとも、限らないですよね」
私は、静かに言った。
「難しいですよね。ただ一つ言えるのは、女性は誰しもあざとい一面がある、ということです。カロリーネ様だけじゃありませんよ」
私は、榎本さんの言葉を思い出していた。
――女は誰でも、あざとい一面があるよ……。
カロリーネは、目を見開いて私の言葉を聞いていたが、やがてふっと笑った。
「かもね」
「そうですよ」
「じゃ、過去の反省はおしまいとするわ。今の私の課題は、あのクソ女子修道院長と戦うことだもの。見てなさい、今に私が、この修道院のトップになってやるんだから!」
カロリーネが、勢い良く立ち上がる。私は、大豆の山を指した。
「では申し訳ないのですけど、こちらから始めていただけます? 一緒に、美味しい調味料を作りましょう。牛丼、楽しみにしていてくださいね」
「ギュウドンて何よ?」
それも知らされていなかったらしい。説明すると、カロリーネはキーキーわめいた。
「そんな贅沢品を、ここで食べさせてもらえるわけないでしょ! よし決めたわ。ギュウドンを食卓に載せるよう、修道院長と戦ってやる!」
「私も、応援します!」
私は、カロリーネの手を取った。話を聞いていたのか、修道女たちがわらわらと部屋に入って来る。
「私たちも、協力しますわ」
「美味しそうな料理ですこと。絶対に、食べたいです!」
私は、思わず顔がほころぶのを感じていた。過去のいじめの経験から、ずっと同性との関わりを避けていた私。それが、この異世界へ来たおかげで、初めて女友達を作れた。それどころか、苦手なタイプの女性にも、こうして正面からぶつかって打ち解けることができた。
(そして、素敵な旦那様にも巡り会えた……)
ここへ来て、本当によかった。修道女たちの群れの中で、私はしみじみと感慨に浸ったのだった。
了:お読みいただきありがとうございました。
カロリーネが、顔を引き攣らせる。それでも私は続けた。
「以前のカロリーネ様って、取り巻きに囲まれていたけれど、真の信頼関係は無かった気がして。でも今は、本当に慕われている気がします」
図星だったのか、カロリーネは黙り込んだ。
「知った風な口を利くなって言われそうですけど……。カロリーネ様も色々大変だったんだろうなって、今となっては思うんです。そりゃ、あなたにはひどい仕打ちをされましたけど。でも、王族というお立場って、計り知れない苦労があることでしょう……」
「うるさいわね!」
カロリーネは一言そうわめいたが、ふとうつむいた。
「まあ、確かにそうね」
「……」
「いつかあなた、言ってたわよね。自然に振る舞えばいいのにって……。あの時は反発したけれど、今となっては思うの。過剰に気さくに振る舞わなければよかったのかなって。あざといと思われたから、グレゴールに好かれなかったのかしら……」
「けど、完全自然体で振る舞ったからいいとも、限らないですよね」
私は、静かに言った。
「難しいですよね。ただ一つ言えるのは、女性は誰しもあざとい一面がある、ということです。カロリーネ様だけじゃありませんよ」
私は、榎本さんの言葉を思い出していた。
――女は誰でも、あざとい一面があるよ……。
カロリーネは、目を見開いて私の言葉を聞いていたが、やがてふっと笑った。
「かもね」
「そうですよ」
「じゃ、過去の反省はおしまいとするわ。今の私の課題は、あのクソ女子修道院長と戦うことだもの。見てなさい、今に私が、この修道院のトップになってやるんだから!」
カロリーネが、勢い良く立ち上がる。私は、大豆の山を指した。
「では申し訳ないのですけど、こちらから始めていただけます? 一緒に、美味しい調味料を作りましょう。牛丼、楽しみにしていてくださいね」
「ギュウドンて何よ?」
それも知らされていなかったらしい。説明すると、カロリーネはキーキーわめいた。
「そんな贅沢品を、ここで食べさせてもらえるわけないでしょ! よし決めたわ。ギュウドンを食卓に載せるよう、修道院長と戦ってやる!」
「私も、応援します!」
私は、カロリーネの手を取った。話を聞いていたのか、修道女たちがわらわらと部屋に入って来る。
「私たちも、協力しますわ」
「美味しそうな料理ですこと。絶対に、食べたいです!」
私は、思わず顔がほころぶのを感じていた。過去のいじめの経験から、ずっと同性との関わりを避けていた私。それが、この異世界へ来たおかげで、初めて女友達を作れた。それどころか、苦手なタイプの女性にも、こうして正面からぶつかって打ち解けることができた。
(そして、素敵な旦那様にも巡り会えた……)
ここへ来て、本当によかった。修道女たちの群れの中で、私はしみじみと感慨に浸ったのだった。
了:お読みいただきありがとうございました。