モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!

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 恋をしたミユキちゃんは、豹変したのだ。もう名前も覚えていないその男の子が私を好きと知ると、彼女は私を徹底的に敵認定した。表向きはあくまで私の親友を装いながら、ミユキちゃんは陰で噂を流した。……『ハルカは、親友のミユキが好きになった男の子を、卑怯な手段で横取りしたのだ』と。
 でたらめだった。その男の子には、一方的に好かれて困っていたのに。でも他の女子は、皆ミユキちゃんを信じた。ミユキちゃんは、『明るいサバサバ女子』で通っていて、そんな陰険な嘘をつくように見えなかったんだろう。
 こうして私は、『親友の好きな男の子を奪う、あざかわ女子』のレッテルを、完全に貼られてしまったのだ。
 そこから中学三年間、私は学年中の女子からハブられた。私は顔が可愛かったから、妬みもあったと思う。持ち物がなくなることはしょっちゅうだったけど、何より辛かったのは無視だった。女子からは一切口を利いてもらえない、孤独な日々が続いた……。
 担任教師は女性だったけれど、明らかにミユキちゃんサイドだった。思い切って相談したら、逆に『ハルカさんは協調性が無い』と叱責され、私はもう何も言わなくなったのだった。
「それ以来、私、女友達を作るのを諦めたんですよね」
 私は、ぼそりと言った。
「代わりにせめて、男の子と仲良くなろうって。何もしてないのに、勝手に『あざかわ女子』とか決めつけられるんなら、それでいいじゃんて……」
 実際、本当に『あざかわテク』を使ってみたところ、面白いくらい男の子にはモテた。それを見て悔しそうにしている女の子たちを見ると、少しだけ爽快な気分になれた。
 だから、この路線で行こうと決めたのだ。同時に、もう女の友情なんて信用しないとも決めた。特に、『サバサバ女子』は……。
「『あざかわ女子』という言葉は今ひとつ解せぬが」
 グレゴールは、静かに口を開いた。
「お前の数々の奇妙な言動は、そう称されるのだな。そしてそれが、お前のいた世界での、男を惹きつける技なのだと」
「そういうことです」
 きっぱりと頷いたその瞬間、私はドキリとした。グレゴールの手が伸びてきたからだ。彼は、その大きな手で、私の頭をポンポンと撫でた。
「お前も、苦労してきたのだな」
 グレゴールが、低く呟く。
 私は、何だか不思議な気分だった。本当は女友達が欲しかったのに、ずっとできなかった。『あざかわテク』で男性にはモテてきたけど、実はどこか満たされなかった。この複雑な思いを、まさか異世界の男性・グレゴールが理解してくれるなんて……。
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