浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
 いまのって、どういう意味でのお誘い?

 ちょっと期待している自分がいる。

 いえいえ、待ってよ。

 そうよ。執筆の参考になるから、っていう意味にきまっているじゃない。

 ほんとバカよね、わたしって。

「そうね。かんがえておくわ。それより、他の小説を読む?ここにあるのは、一昔前のものばかりだけど」

 本棚に並んでいるのは、ほとんどが亡くなったお父様が収集していた本である。

「いいや。何度読んでも面白いからね。じゃあ、失礼して読ませてもらうよ」

 彼はそう言うなり革靴を脱ぎ捨て、長椅子の上にうつ伏せになった。

 そして、「黒バラの葬送」を読みはじめた。

 そうね。いまここで「白ユリの楽士」シリーズを読めば、嘘がなかったことになる……。そうよね?

 というわけで、わたしもランニング用の靴を脱ぎ捨て、長椅子の上にうつ伏せになって読みはじめた。

 女の腐ったみたいな描写が描かれているであろう小説を……。





 







< 115 / 330 >

この作品をシェア

pagetop