浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「それにしても、どのシーンも素敵よね。経験していなければ、あれだけリアルに描けないわよね」

 読んでいるときから気になっていた。失恋だろうが溺愛だろうが、すべてのシーンがリアルすぎる。だからこそ読者は、共感出来るし体感している気にさせられる。

 アレックス自身が経験していないと、あれだけリアリティ溢れる描写は出来ないはず。

 読書中、そのことが頭の片隅でチラついていた。それから、心の端っこでひかかっていた。

 胸の奥が、チリチリ痛みもしていた。

「なんだって?」

 突然、彼が頓狂な声を上げた。

「だってそうでしょう?ずばり、あなたの体験の上での描写よね?あなた、すっごくカッコいいしやさしいから、リアルにモテるでしょう?「白ユリの楽士」、セシリオよりずっとレディと経験しているんじゃないかしら」

 出来るだけさりげなく、それでいて「わたしは気にしていない」感満載で尋ねてみた。

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