この動画を見ないで下さい
みちる……?

僕の心臓は狂ったテクノミュージックのようなリズムを刻み始めた。

画面の左端から白い霞がたなびいていることに気づく。

次の瞬間、男がフレームインしてきた。

女の近くまで歩み寄り、煙草を床に落として靴の底で踏み消した。

カメラに背を向けたまま、肺に残されていた煙を吐き出す。


出し抜けに、女の頭に被せられた紙袋を乱暴にむしり取った。


みちるだ――。

さるぐつわを噛まされている。

涙で濡れた頬が電球の光を反射させた。

僕は膝裏でロッキングチェアを跳ね飛ばして立ち上がった。

何だこれは……悪い冗談はよしてくれ。


男が振り返り、僕は再び驚愕した。
< 4 / 42 >

この作品をシェア

pagetop