冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
六章 アンドレアの宣言とミリアの苦悩

朝一番、ミリアは離宮にある彼女の住居『胡蝶の間』で頭を抱えていた。

頭にずっとあるのは、昨日のことだ。侍女たちが一度朝食の食器を下げていったタイミングで、またしてもソファに転がって声なき呻きを上げていた。

昨日、アンドレアに夫婦宣言をされてしまった。

そのうえ、ファーストキスもあっさり奪われてしまった。ミリアは身代わりの花嫁として、無関心に放置されまま半年を過ごして帰国するはずだったのに、

『夫婦になるのを忘れるな』

もはや疑う余地のない『結婚続行』の意思だった。

(いや、なんでそうなんの―っ!?)

アンドレアの言葉を思い出して、ソファの背に額を何度も打ち付ける。

しかも、苦悩からの頭痛に加えて心臓が痛い。

任務失敗の可能性への緊張感とは別に、激しくときめいて、考えるたびなんとも言えない恥ずかしさに襲われていた。

(うわぁあぁあ何このどきどきっ、私、死んじゃうの!?)

色々な意味で、ミリアはいっぱいいっぱいになっていた。

アンドレアは、結婚を続行する気でいる。隣国から娶った『第一王女コンスタンシア』を妻に――。

そんなことになったら、本物のコンスタンシアがアーサー王子と結婚できない。

(私が今姫様の名前を使ってるんだもんっ、絶対困るよね? ど、どうしよう!?)

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