冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「お前が十二歳だった頃に、初めて自分から会いに行きたいと言った王女だ。それが結婚相手になったのだから、嬉しいだろう?」

「誰が嬉しいものか」

唸るような声に、居合わせた臣下たちもはらはらと見守っている。

(――彼女じゃ、なかったんだ)

アンドレアは忌々しい過去を思う。

今から役十年前、十二歳だった時に、彼はこの王宮で〝サンスティール王国の第一王女〟を見たことがあった。

彼は興味がなくて、国同士の付き合いの挨拶には同席しなかった。

もう王宮を出る頃だろうと思って、訓練場から戻ってきた時だった。二階の廊下を歩いていると、彼女が木の上からぼとっと落ちるのを目撃してびっくりしたのだ。

彼女は、珍しいアイスブルーの目をぱちくりとして、泣きも痛がりもせず、一人で笑っていた。

とても風変わりな王女だ、という印象を抱いた。

『……木に登ったのか? 姫なのに?』

じっと見ていたところ、同行していた護衛騎士が気を利かせて教えてくれた。

『ご衣装からすると、サンスティール王国の第一王女でしょう』

初めて女の子に興味を抱いた。

笑っていた彼女が、どうにも忘れられなかった。話しかけに行けばよかったと後悔したのは、気になって仕方がなくなったせいだ。

そこで彼は、忌々しいが、食えないこの父に『会いに行きたい』と頭を下げて頼んだのだ。

< 19 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop