ねぇ、放さないよ?
三人で住むようになって、とても充実した生活を送っていた有愛。

朝起きると二人が笑顔で迎えてくれ、家族の団欒とはこうゆうのなんだと、幸せを噛み締めていた。


しかし、結婚して10ヶ月程経った頃。
その頃から玄琉と美里愛の間に、隙間のようなモノを感じるようになった。

「お姉ちゃん」
「ん?」

ある日の休日、玄琉が仕事で出ていた日中。
美里愛に聞いてみた、有愛。

「お兄さんと何かあったの?」

「………ううん!何も!」
少し間をあけて、微笑んだ美里愛。
「ほんと?」

「うーん…最近、お互い忙しいからね~」

「そっか!だったら、いいんだけど……」
「アリが心配することじゃないわ!」
頭をポンポンと撫でて微笑んだ。



そんなある日だった━━━━━━━

その日、有愛は家に一人でいた。
二人とも残業で夜遅くなるとのことで、一人でゆっくりしていた。

軽く夕食を食べ、入浴中。
「あー!シャンプー、ない……
忘れてた…詰め替えるの」

簡単に身体を拭き、バスルームのドアを開ける。
「いいよね?今、一人だし…」

バスタオルを身体に巻き、自室に向かう。
「買っておいて、詰め替え忘れるなんて……(笑)」

詰め替えのシャンプーを取り、バスルームに戻る。
すると、玄関のドアがガチャガチャと音がしだした。
「え……!!?ど、どうしよう…」

ガチャ…とドアが開く。
そして、玄琉が帰ってきた。

「あ!ありちゃん!ただい……━━━━━!!!!?」

「◯★○☆○●!!!!?
ご、ご、ご、ごめんなさーい!!!」
慌てて、バスルームに駆け込んだ有愛。



「━━━━━お兄さん!!ほんっとうに!ごめんなさい!!見苦しいところを見せて……!!!!」

土下座をして頭を下げる。

「もういいよ!
……………ただ、忘れないでね?」
「え………」

土下座している有愛の前にあぐらをかいて座った、玄琉。
有愛の頬に触れた。

「僕も……“男”だってこと」
微笑んでいた玄琉の目が、一瞬キラリと光った。

「え?お兄さん?」

「フフ…
あ、ねぇ!ケーキ食べない?」
「あ、う、うん」

そしてこの日を境に、玄琉が積極的に有愛を口説くようになる。




よく考えれば、この時から全ては歪み始めていたのだ━━━━━━
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