ねぇ、放さないよ?
身代わり
━━━━━━美里愛の葬式が終わり、マンションに帰ってきた玄琉と有愛。

空気が淀んでいた。

「━━━━━ありちゃん、コーヒー淹れようか?」
「あ、うん…」

忙しなく通夜や葬式などがあって、悲しむ余裕がなかった二人。
今になって、悲しみが溢れていた。


「……っ…お姉ちゃん……」
「ありちゃん、泣かないで?」

コーヒーをテーブルに置いた玄琉が、有愛の隣に座り抱き寄せた。
有愛は玄琉のジャケットを握りしめ、美里愛が亡くなって今始めて声をあげて泣いた。


━━━━━━ゆっくりコーヒーを飲む。

「ありちゃん、落ち着いたみたいだね」
「うん…
ごめんね、お兄さんの方が泣きたいよね……」

「ううん…大丈夫だよ!」
微笑む玄琉に、有愛は両手を広げた。

「お兄さん!今度は、私の胸を貸すよ!
泣いていいよ!」

「………」
(ほんと、可愛すぎ!!/////)

「お兄さん?」

「フフ…ありちゃんの胸は、小さいもんなぁー(笑)」

「え?
酷ーい!(笑)」
「フフ…可愛い!
でも、ありがと!
ありちゃんがいてくれて良かった!」
微笑み、頭をポンポンと撫でたのだった。


「━━━━ありちゃん、お風呂入ってきな?
今日は、もう休んだ方がいいよ」
「うん。
じゃあ、お先に……」

有愛が入浴し、その後に玄琉も入る。

「ありちゃん、おやすみ!
ゆっくり休んでね!」
「うん…おやすみなさい」

部屋に入り、ベッドに横になる有愛。

「………」
なかなか、寝つけない。

「………」
有愛は、部屋を出た。


冷蔵庫から、ミネラルウォーターを取り出しコクコクと喉を鳴らし飲む。

アイランドキッチンから、ソファの方を見つめた。

和気あいあいとした、玄琉・美里愛・有愛がいた。

「…………お姉ちゃん…」

また、涙が溢れていた。

「なん…で、死んじゃったの……?なんで…」

手からペットボトルが滑り落ち、床に落ちる。
バシャッと音がして、中のミネラルウォーターが溢れた。

そのまま項垂れ、へたりこむ。

「有愛?
━━━━有愛!?どうし━━━━━━」
そこに玄琉が来て、有愛に駆け寄った。
有愛は、玄琉に抱きついた。



「どうして!!!?」
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