天秤は愛に傾く ~牙を隠した弁護士は不器用女子を甘やかしたい~
第六章 天秤は愛に傾く


素子が法務部に来て二週間ほど。
まだまだ初心者状態の素子が必死にパソコンに向かっていると、法務部のドアがノックされた。

「芝崎さんは?」

誠と同じくらいの男性社員が声をかけると、芝崎が自分のブースから出てきた。

「何ですか?」
「加奈さん来てるよ。ご指名」

社員はニヤリと笑い親指を後ろの方に動かすと、その後ろからひょこっと女性が出てきた。

「わーん!会いたかった!」

ドア付近に来ていた誠に、女が飛びつくように抱きついた。

「おい!」
「良いじゃ無い、久しぶりの抱擁なんだし」

素子は自分のデスクからその様子が丸見えで、誠は素子が目を見開き自分を見ているのに気付く。

「福永さん」
「お兄さんにも挨拶するし、行くわよ!」

素子に声をかけたものの、誠の腕に自分の腕を絡め、引きずるように歩き出した。
その時肩越しに女は素子を睨んで出て行った。

呆然とドアを見たままだった素子は女に見覚えがあることに気付き、机の上に置いてある資料から自社のパンフレットの束を取る。
そこには以前から会社が出した広告なども含まれており、一つ一つ確認していると一枚の紙に目が留まった。

(『加奈』、以前広告のモデルをされた人だ)

その化粧品の広告にはピッタリとしたジャケットとタイトスカート姿の加奈が写っている。
大きな胸とウエストの細さを強調していて、二十五歳でセクシーなモデルとして人気だ。
恐らく普通の関係では無い事くらい素子にもあの様子だけでわかった。
今は勤務中。
素子は雑念を振り払うように、だがあの威嚇された目が消えないまま仕事に戻った。

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