一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

「何にせよ、まずは明日にでも病院に行ってしっかり検査してくること。そして、その副社長にも話すこと」

「……え!?話すの!?」

「話さないでどうするの?その子の父親なんでしょう?」

「そ、うだけど……でも、それで話して責任取る、みたいになっても困るよ。相手はあの副社長だし」


下を向いて否定する私に、静香は呆れた視線を向ける。


「結婚するとかしないとか、私からすれば正直どっちでも変わんないけどさ。相手にも責任があるんだから。それは話すべきでしょ。それに万が一堕すにしたって相手の同意サインが必要だってわかってる?」


言われて初めて気が付いた。


「……そっか」


堕すという選択肢。


「……どうやって産んで育てるかしか、今は考えてなかった」


検査薬をした直後は頭の片隅にあったはずなのに、今は堕すという選択肢が頭の中から抜けていた。


「産むつもりだった、ってこと?」

「……なんだろ……。自然と、そう考えてた」


下腹部を摩りながら、ポツリと答える。

静香はそんな私を見ながら、そっと微笑んでくれた。


「なんだ。ちゃんと受け入れてるんだね」

「え?」

「でも考え無しに決めるのは反対」

「……」

「まずは病院行ってから、どうするか考えよう。不安なら私も病院付き添おうか?」


明日は土曜日だし。そう言った静香。

ありがたい提案だけれど、首を振ってそれを断る。


「……一人で行ってみる」

「そう?」

「うん。……けどやっぱり怖いから、病院終わってからまた相談乗ってくれる?」

「ははっ、もちろん。オッケー」


二つ返事で了承してくれた静香に、何度もお礼を言った。

今日は無理を言ってしまってもう遅いのと私が落ち着かないため、静香には泊まって行ってもらった。

狭いベッドの中、静香が笑いながら一緒に寝てくれた。

気が付けばそのまま眠りに落ちて、次に気がついたのは翌朝。

静香に見送られながら、朝から産婦人科の病院へ向かったのだった。
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