夫婦間不純ルール
Rule 2


「この服なんてお似合いですよ、お客様は肌が白いのでどの色も映えそうです」

 ショップの女性店員が淡いパステルカラーのワンピースを勧めてくるけれど、今一つ気分が乗らない。好きな店でも覗いて気分を盛り上げようとしたけれど、やはり今日の岳紘(たけひろ)さんとの食事は少し気が重かった。
 それでも新作だという数着を選び配送を頼むと、支払いを済ませそのまま店を出る。夜には岳紘さんとの待ち合わせをしている、後数時間どこで時間を潰そうか……

 こんなに早く家を出る必要なんて本当はなかった、ただあの部屋にいると今日も何かとんでもない話をされるのではないかと不安で。
 いてもたってもいられなかった、だから今こうして街中で時間を潰している。

「あら、こんなところにカフェが出来たのね。ここならゆっくりしていけるかも」

 ウロウロしていると大通りから隠れるように建っている落ち着いた雰囲気のかフェを見つけて、少しワクワクした気持ちでドアを開ける。普段の私ならきっと気づかなかった、そのお陰か得した気分にもなれる。

「いらっしゃいませ、好きなお席にどうぞ」

 店のマスターらしき年配の男性が穏やかな笑顔で挨拶してくれる、それだけでここに来て正解だと思えた。カウンターの空いている席のひとつに腰掛け、アイスコーヒーを注文した。美味しそうな軽食もあったが、これから夫と食事をする事を考えやめておいた。


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