夫婦間不純ルール
Rule 1


「……ごめん、やっぱり(しずく)を女性として見ることは出来ない。君は俺にとってずっと妹のようなものだったから」

 初めて迎えた二人の夜、私を抱いた後にその日夫になったばかりの彼はそういった。
 確かに彼が私に触れる様子はどこか儀式めいたものがあり、私が想像していたものとはだいぶかけ離れていた。愛情も欲情も感じられないその行為に、私の心と体も冷えていくのが自分でもわかってしまったから。

 そう思うのならば最初から私を抱かなければよかったのだ。それなのに中途半端に彼に触れられたことで、私の中で諦められない気持ちが生まれてしまった。
 ……こうして抱き合うことが出来るのだから、いつかは夫の考えも変わるかもしれない、と。

 しかし夫の岳紘(たけひろ)が私の肌に触れたのは、一年間の結婚生活でこの一度だけだったのだが。


< 2 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop