異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます

76 馬車○ッ○○

「は、はい!」
「私と帰りますよね」と、アドルファスさんが聞いてきた。
「え、あ、は、はい」

この場合、私にアドルファスさん以外の選択肢はない。他の二人の目的が財前さんの言うとおりのものかわからないが、駆け引きのようなものは得意ではない。

「では、帰りましょう」

アドルファスさんが差し出した手に、自分の手を乗せると、力強く引っ張られ腰を抱かれた。

「では、失礼します。聖女殿、殿下、また宴でお会いしましょう」

アドルファスさんは財前さんと王子に声をかけ、後の二人には軽く会釈する。

「財前さん、またね」
「さよなら先生」

財前さんに手を振り、私はアドルファスさんに引っ張られるようにその場を後にした。

「わざわざ迎えに来ていただいてありがとうございます」

バタバタしていて言いそびれた言葉を告げる。

「でもお仕事を抜け出してまで、良かったのですか?」
「助手に任せてきたので大丈夫です。生徒たちも私がしかめっ面でイライラして傍にいるより、自習時間の方が気が楽でしょう」
「負担になっていないならいいんです。迎えに来てくれて嬉しかったです」

王子とも表面上は少し歩み寄れた。財前さんも泣いたおかげか落ち着いた様子だった。今日の神殿への訪問はかなり実のあるものになった。
でも廊下を私に向かって歩いてくるアドルファスさんを見て、ホッとする自分がいた。

「アドルファスさん?」

なぜかアドルファスさんはギュッと唇を噛み締め、厳しい顔をする。

「そんなこと言われたら、今すぐあなたを抱きしめて口づけしたくなるではないですか」

顔半分を手で覆い、恨みがましく私を見下ろす。

「仕事を抜けてまで迎えに来たのをうっとうしく思われないかと不安になりながら、それでも心配だから来たんです。そうしたら、ラザール氏やアドキンス氏があなたを囲んで立っているではありませんか」
「それは。まあ、あの人たちも仕事でしょうから」
「アドキンスもラザールも油断なりません。聖女殿を口実にあなたに近づこうとしている魂胆が見え見えです」
「え、そんなに?」
「言ったではないですか。あの薔薇もそうだし、クムヒム神官がカザールがあなたのことを可愛らしいと言っていたとも聞きましたよね」
「はい。聞きました」
「すべてあなたの気を引くためなんです」
「そんな…」
「私の取り越し苦労ならいいんですが、万が一ということもあります。あなたは小柄で愛らしい。その手の女性が好みなら気になるのは当たり前です」

いきなりのモテ期到来?合コンなどでも私はいつも二番手三番手。一番人気はいつも私じゃない誰かだった。それがいきなり?むしろ何か裏があるのではと勘ぐってしまう。

「こういう場合、私はどうすればいいんでしょう。あの人たちにはこれからも会う機会があるでしょうし、でもはっきり何か言われた訳でもありませんから、私からその気はありませんと言うのも変ですよね」
「まあ、今日私が来たことでいくらか牽制にはなったと思います。もし彼らがはっきり言ってきたらその時はきっぱり断りますよね」
「もちろんです。私、器用じゃありませんから、二股されたことはあっても、自分がそんなことできません。私は今、アドルファスさんとのことでいっぱいいっぱいですから」
「ふた、また?」
「あ、いえ…」

周りから見えないように、私からも彼に触れる。体を許しあった者同士の間に漂う親密さ。

「とにかく、私の恋人はアドルファスさんです」

上目遣いに彼を見上げれば、熱を帯びたアイスブルーの瞳とぶつかった。

「馬車に急ぎます」
「え?」

そう言ってアドルファスさんは馬車まで速歩きで私を引っ張って行った。

扉を閉めるなりパチンと指を鳴らす。何か薄いベールのようなものが壁に張り付く。

「あの、アドルファスさん?」

食べられる。そう思うほど私に向けられる彼の瞳はギラギラしていた。

「獣のようだと言われても仕方ありませんが、戻る前にあなたを抱いていいですか?」

雄の目でそう告げられて、私は息を呑んだ。

「こ、ここ…で?」

掠れ声で尋ねる。カーセックスならぬ馬車セックス?私には難易度が高すぎる。アドルファスさんには経験があるんだろうか。

「私も初めてですよ。それだけ余裕がないということです」

私の考えがわかって、自嘲気味に答える。

「できるだけあなたの負担のないようにするつもりですが、少々の不自由さは覚悟してください」
「あの、アドルファスさん?えっと…何を」
「防音と衝撃軽減の魔法をかけましたから、声が外に漏れることも、振動が伝わることもありませんから、好きなだけ乱れてください」

そう言ってアドルファスさんは私を膝に乗せて唇を奪った。

「ア、アド…」

キスをしながら、彼の手が私の胸に触れる。

「あ…」

下乳を下から掬いあげ、掌で押し付けるように揉まみながら、口づけが深くなる。

アドルファスさんから飛び火した火花が私の欲望にも火を点け、一気に燃え上がった。

「アドルファスさ…ふぁ…あ」

服の中で乳首がツンと尖るのがわかる。衣服越しにアドルファスさんの指がその部分を探りあて、親指と人差し指でぎゅっと摘んだ。

「あ、ああ…あ…」

顔を仰け反らせ、顕になった喉にアドルファスさんの唇が滑り落ちる。

「声が漏れることはありません。存分に乱れていいですよ」
「アドルファスさ…仕事…戻らないと」
「わかっています。本当はこのままずっとあなたといたい」
「だめです。し、仕事は…しないと」
「あなたならそう言うと思っていました。だから、家に着くまで…その後は戻りますから…」

衝撃軽減の魔法のお陰でまるで振動が伝わらず、滑るように進む馬車の中で、服を着たままアドルファスさんの天を貫くほどに勃ち上がったものに
何度も達かされた。
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