垢玉

最終話

 
 最初に感じたのは、リサさんの指先だった。

 細く、しかし力強い指先だった。この指先はきっと何人もの男女の垢玉を取ってきた経験があるのだ、と素人の僕でもすぐに分かった。



 背中を揉みほぐすようにリサさんの指先は動いている。ちょっと、くすぐったい。心地の良い刺激が、背中を伝わる。



「そんなに大きくないよ」とリサさんは言った。彼の垢なら、君でも十分取れる。大丈夫、私が見ているから。彼女は藍ちゃんにそんな言葉を投げかけている。



 後ろで、リサさんと藍ちゃんが交代する気配を感じた。もう始めていいんですか? という藍ちゃんの声が聞こえる。



 僕の背中に、藍ちゃんの指が触れる。恐ろしく華奢で儚い指先。呼吸による僕の背中の、緩やかな上下の動きは、藍ちゃんの指先に伝わっているかもしれない。



 少し間があって、背中にひんやりとした感触が広がった。クリームだ。垢を浮かび上がらせるための重要なクリームだ。こんな感じですか? いいよ、その調子。という彼女たちの真剣な声を僕は聞いた。



 できるだけジッとして、身体の震えを抑えようとする。ソファーが体温でだんだんと温かくなってきた。みぞおちに汗が滴る感覚を覚えた。しかし、僕は動かない。動かず彼女の指先の振動を背中に感じている。



 塗り広げました。あとは待つだけでしょうか? そうね、これからが本番。

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