まあ、食ってしまいたいくらいには。
おしまい



「あれ、めずらしい。集団登校だ」



事件から数週間後の朝。


寮のロビーに集まったのは偶然だった。

みんな今から学校に行くところだったんだろう。


芽野くん、三栗くん、奈良町先輩。

あとひとり足りない。


一瞬置いていこうかとも思ったけど、今まで同じ屋根の下で生活していたのに、こうして一緒に登校するのは初めてだったことに気づいた。



「わたし、呼んでくる」


一部からブーイングのようなものを受けながら、わたしはその部屋へと向かった。


わたしの部屋の鍵を壊すくらいだから、きっと自分の部屋にも鍵はかけてないんだろう。


そう思ってドアを開けようとしたらびくともしなかった。押しても、引いても開かない。



「…………」



ガチャガチャガチャガチャ。


無言で繰り返していたら、しばらくしてドアが開いた。


やっぱり寝起きはあまりよろしくないんだろう。

まるで食い殺さんばかりの視線だったけどもう動じない。




「愔俐先輩。みんなで一緒に学校いこ」


< 232 / 236 >

この作品をシェア

pagetop