本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜

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駅前広場には広い公園があり、その一角に腕利きの庭師が作ったという素晴らしい日本庭園が広がっている。


中心にある大きな池には真っ赤なアーチ状の橋がかかっており、その周りを季節ごとの様々な木々や花が囲む。奥には茶室があり、お茶会を開いたりお見合い会場としても使われている。


今の季節は遅咲きの梅の花とツツジがとても綺麗に咲いており、澄んだ池も相まって写真映えする観光スポットとしても非常に人気だ。


平日のもう夕方だからだろうか。薄暗くなり始めているここには人はまばらで。そこまで多くはなかった。ゆっくりと並んで散歩をする。



「……綺麗」


「本当。梅ってこんなに綺麗だったんだね。知らなかった」



橋の上で止まり、手が届きそうな程の距離にある梅の花を見つめる。



「私も初めてここに来た時に驚きました。でもこれ、秋は秋でもっと素敵なんですよ」


「……紅葉ってこと?」


「はい。この庭園の木々が全て一気に紅葉するんです。とても綺麗で、紅葉をバッグにこの橋の写真を撮って帰る方がすごく多いんです」



それは想像するだけで吐息が漏れそうなくらいの絶景だろう。


二人で一緒に梅を見上げていると少し風が吹いてきて、由麻は靡く髪の毛をそっと抑える。


その姿はとても綺麗で、和音はぞわりと鳥肌が立つのを感じた。

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