本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜


病院の一階に降りてロビーを通り、エントランスに向かって歩いていた由麻。


エントランス横にある院内案内図の映像が流れるパネルの前を通りかかった時、そこで明らかに呆然と立ちつくしているスーツ姿の男性を見つけた。



「……ん?」



……なんだアレは。



思わず立ち止まったのは、とても困っているのが後ろ姿でもわかったから。


見ていると案内映像を指差しながら何度も首を傾げたり辺りをきょろきょろと見回したり。


とても挙動不審だった。


そのまま数秒視線を奪われていると、突如その男性は由麻の方に振り返る。



「……あ」



目が合ってしまい、由麻はさりげなくその視線を逸らす。


しかし彼は何を思ったか、由麻の方にどんどん近寄ってきた。



「……あのー」


「……はい?」



見上げるように返事した由麻に、彼は複雑そうに微笑む。



「すみません。外科病棟に行きたいのですが迷ってしまいまして。道を教えて欲しいんです」


「……」



案内図には現在地から外科病棟への行き方がしっかりとわかりやすい図と共に映像で流れているにも関わらず、迷ってしまったと言う彼。


由麻は言葉を失いながらも、その彼の容姿に既視感を覚えた。


末広二重の目に高い鼻。少し長めの黒髪はワックスでセットされていてふわふわとしている。


とても綺麗な人だと思った。


そして百八十は軽く超えているであろう長身とすらりとしたスタイルが、目の前の由麻をさらに小柄に見せる。


なんだか愛美に似てる。直感的にそう思った。

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