死体写真
それが夕日のせいでないことはすぐにわかった。


照れ隠しのために上をむいたのだ。


私は微笑んで「そうだね。私もそう思ってるよ」と、答える。


そんなの当たり前のことだけれど、こうして声に出すとどうしてこんなに恥ずかしいんだろう。


気がついたらお互いに赤い頬をしていた。


そっと手を伸ばして握られた右手が熱くて、心音まで相手に聞こえてしまいそうに感じる距離。


手をつないで帰ることには慣れた。


校舎裏で誰にも秘密のキスもした。


でも、そのあとは……。


チラリと横目で裕之を見ると、裕之も私を見ていた。


互いに何も言わずにはにかんで微笑みあう。


そろそろ、もう少し先に進む時期がきたのかもしれない。


そんな予感を抱いていたのだった。
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