花風㊥
新緑の若葉が吹き荒れる頃。

あれから上司の家で週に一度は二人の時間を過ごしている。

「雨が降りそうだ、傘は持ってきたのか」

些細な事を気遣う声色が問い掛けてくる。

「大丈夫です、明日には止むと予報で見たので・・・」

「だが、酷くなりそうだ・・・」

怪訝な顔が窓の外を眺めて居た。

「そうですね・・・」

着替えを終えて隣に立つと口角が少し上がる。

「お気に入りの様だが、良く似合っている」

褒められて軽い態度で誤魔化す。

「中学から着ていて・・・もうボロボロです・・・」

「それでも俺には気持ちが伝わる」

何度か頷いて見せ、ソファーに腰を掛け促して居る。

「近い内に買おうかとも思ってますが・・・腰が重くて・・・」

苦笑いで返すも穏やかな表情のまま口が開く。

「では、御揃いの物を買えば良い。我ながら名案だ」

余裕とは裏腹に視線が逸れて居た。
< 1 / 57 >

この作品をシェア

pagetop