激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
7あふれる想い

■あふれる想い


「亮一さん、今日の朝食は亮一さんの好きな和食ですよ」

 リビングに入って来た亮一さんに、笑顔で声をかける。

「大使夫人に日本食材が豊富なスーパーマーケットを教えてもらったんです」

 ダイニングテーブルの上には、炊き立ての白いご飯に野菜たっぷりのお味噌汁。
 卵焼きとサーモンの塩焼き。

 日本の朝食の定番メニューが並んでいる。

「おいしそうだ」
「よかった。本当は魚の干物がほしかったんですけど、こっちじゃなかなか売ってないんですよね。もう自分で作るしかないかなと思ってて……」

 笑顔で話し続けていると、「日菜子」と彼が私の名前を呼んだ。

 その真剣な声に、びくんと肩が跳ねる。

「あ、お漬物をだすの忘れてました。亮一さん食べていてください」

 なにか言いたげな彼から目をそらし、逃げるようにキッチンへ向かう。

 冷蔵庫の前に立つと、はぁーっと大きく息を吐き出した。


 冷静にいつも通りに振舞おうとがんばっているのに、ささいなことで心が揺れる。

 私が動揺を見せれば、彼に気を使わせてしまう。


 こんなんじゃだめだ。




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