極甘恋愛短編集
「いや、そうじゃなくて……」


徹と喧嘩だなんて考えただけで胸が痛くなる。


徹と距離ができるのは今の私にとってなによりも辛いことだった。


「でも、今日はやめておこうかな」


ノロノロと立ち上がり、リビングから出て自室へと向かう。


本当は母親の言葉に飛びついて徹の家に行きたかった。


今からでも行きたい。


でも、と、自分を制する。


今まで私は学校帰りに徹の家に寄っていたのだ。


だけど今日は休日だ。


もしかしたら、徹の彼女が来ているかもしれない。


「そんなの、無理……!」


口に出して呟き、ベットにダイブする。


枕に顔をギュッとうずめてキツク目を閉じた。


もしも今徹は彼女と一緒にいたら?


お昼ごはんも晩ごはんも彼女の手作りだったら?
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