極甘恋愛短編集
突然のことで頭が真っ白になり、立ち尽くす。


ここは玄関先で、しかも徹には彼女がいるかもしれなくて、それなのに、どういうこと!?


パニックを起こしてしまいそうになりながらも、どうにか徹の体を押しのけて玄関に入り、ドアを締める。


さすがに外でハグはよくない。


ご近所さんに見られたらどんな噂を立てられるかわからない。


けれど徹はそんなこと少しも気にしていない様子で、部屋の中に入ってからも私にくっついて回った。


「あ、あのさ、徹。どうかしたの?」


好きな人にくっつかれて嬉しいものの、さすがに困惑してしまう。


とにかく徹を落ち着かせようとソファに座らせた。


「昨日明日香ちゃん来ないから……」


そこで言葉を切った徹は涙目だ。


もしかしてずっと待っていたんだろうか。


私のことを?


そう思うと胸がギュッと痛くなった。
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