ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。

『こちらもそこまで親族と交流が深いわけではないので…詳しいことはよく分かっていなくて。それは、どんな病気なんですか……？』


『主に運動神経細胞……筋肉を動かすために働く細胞が変化して、筋力の低下と筋肉の萎縮(いしゅく)、運動機能の低下が起こります』



最初は股関節や太ももをはじめとした下半身部位から始まり、そこから徐々に全身に広がっていくらしい。


ホワイトボードに貼られた数枚の写真には、過去にその病気を患った患者らしき人物が写っていた。

杖、車椅子、寝たきり。

だんだんレベルアップしてゆくように並べられてゆく写真。


驚くくらい痩せた足や腕、恐怖を覚えてしまうほどに関節の動きが不気味だと思ってしまった。



『ただ、この病気は個人差が激しく、一概には説明できないんです。
2年で寝たきりとなる人もいれば、10年かけてゆっくり進行していく人、生活に大きな支障をきたさないレベルの患者もいます』



母親は過呼吸を起こし、看護師に背中を擦られながら診察室を出ていった。



『SMAは幅広い年齢層で発症するので、症状も軽度なものから重度なものまで様々です。
なので…浅倉くんの予後については、こちらからも的確なことは言えません』