ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




ガタッッ!!!


名簿では基本いちばん最初に名前を呼ばれる。

いまも存在があるのに返事をしない私へと、先生は少し強めに呼んできた。



「…なにもそんな勢いよく立ってまで返事しろってわけでもないぞ青石」



余計に教室中を異様な空気にしてしまった、私の行動。



「……すみません」



そのままスッと、再び席についた。


どこから転んだの…?
高い場所から転がり落ちたんじゃないの…?

たとえば階段とかは危ないよね。



「浅倉、」


「…はい」



そんな私の次は、彼が呼ばれる。

入学してから最初の席替えをするまで、私のうしろの席は数日間のあいだ千隼くんだった。



「上田」


「へーい」


「小川」


「はーい」



軽い気持ちで関わろうなんて思ってないよ、叔父さん。

そのほうが難しいよ。


確かに優しさというのはとても身勝手で、自己満足で、ただの偽善でもあって。

見守ること、関わらないこと、それが相手にとっても自分にとってもいちばん無難なことなのかもしれない。


だけど、だけど……、


こんな姿を見て放っておけるほど、私は強くないんだよ。



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