ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
そんな千隼くんもまた、私の部屋着を見つめていた。
上はパーカー、下はショートパンツになっている上下セットのルームウェア。
「……危ないこととか、なかった?」
「全然だよ。通りすぎるおじさんに挨拶したくらいだから!」
「え、ちょっと、……もうさ、」
はあーーーと、わりと長いため息。
不安になって覗きこんでみると、むすっと唇を尖らせた珍しい表情を見つけてしまった。
「わっ…!」
ぐいっと手が引かれる。
どこへ行くのかと思えば、非常階段に使われるドアの先へと。
通り抜ける爽やかな9月の風を感じていると、今度は抱きしめられちゃったみたいで。
「ち、千隼くん…?」
「……心配すぎる。俺がいないと駄目なんじゃないの李衣って」
無意識だったのだろうけれど、彼は言い終わってから気づいたっぽい。
私のすぐにぎゅうっと背中に回した動きと、震える声。
「そうだよダメだよ…っ、だからずっとずっと一緒にいなきゃっ」
「……李衣、顔あげて」
「っ…、ずっと一緒に…いるんだよ…?」