死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「閣下の仰る通りです。ヴァレリアン殿下は滅多に人前に出られないうえ、いつも顔を隠しておられるお方。難しいかと」
「それは知っている。だが、ここはオルヴィシアラではなく、アウストリアだ。我が帝国に神はいない。神の教えとやらに則り、人を差別する人間など一人もおらぬ」
帝国は宗教国家である王国とは違い、皇帝にさえ背かなければ基本的に思想は自由な国だ。この国にいる間は自由なのだから、堂々と王国の王子として出席し、帝国の皇族たちと食事をしてほしいというのがルヴェルグの意見のようだ。
「私はヴァレリアン殿下に、この国に来てよかったと思ってほしいのだ。願わくば、いつか身分を捨てて帝国の民になってほしいとも思っている。彼の家族はいないも同然なのだろう?ラインハルト」
「…そのように聞き及んでおります。政務官の調査では」
「ならば尚更だ。全てを棄てて帝国に来ればいい。私は歓迎する」
「失礼ですが、それは同情されてのことでしょうか?」
晩餐会の開催から、王国で生きづらいのなら帝国の一員になってしまえばいいとまで話が進んだことに一時休止の札を立てたのはグロスター宰相だった。
話についていけていない皇女を横目で見遣り、まだ若き皇帝へと視線を戻す。
グロスター宰相は帝国の政界において、皇帝の次に権限を持つが、皇帝の指導者でもあった。