【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。


「あ……そうなんですか」
 
 友人に、私を紹介してと言われてるんだ……。

「一緒に行ってくれるだろ?」

「……はい。泰裕さんが、良ければ」

 泰裕さんは「そうか。良かった」とハンドルを握り直した。

 私を……妻として紹介してくれるのだろうけど、それすらこんなに虚しいだなんて……。
 でも私は、彼に恩返ししないとならないから、何も言い返せない。

「友人とは現地に待ち合わせにしてるから、現地で落ち合う感じにしてる」  

「分かりました」

「……何を不安になってるのか分からないが、ちゃんと妻として紹介する。安心しろ」

 私は心の中まで見透かされているのではないか、そう思うくらいにビクッとした。

「……あの、泰裕さん」

「花純、お前は正真正銘俺の妻だ。籍入れたんだから、当たり前だろ」

「……はい」

 そんな私に、泰裕さんは「そんなに不安にならなくてもいい」と告げてくる。

「はい。分かりました」

 不安にならなくていいと彼は言うけど、私は不安でしかない。 妻として迎え入れてくれたけど、この結婚には愛なんてない。
 それに……好きにならなくていい。好きになってもらうことも期待するなって、言われているのだから。
< 18 / 44 >

この作品をシェア

pagetop