泡沫の夢

――ふれてしまえば。消えてしまいそうな儚さを夏は持っているのに、記憶の中に夏は、永遠にあるのだと少年は思った。



もう、かえらなければ。



いつまでもここに居ては、季節は巡らないのだから。


誰の心にもあるこの風景の手を引いて、少年は歩きだす。夜色の結った髪が、その度寂しげにゆれる。頭の狐面は名残惜しむように、今まで歩んできた道の後にできた足跡を、ただ静かに見つめた。


その瞳に、しっかりと焼きつけようとするかのように。

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