目の前の幸せから逃げないで

金曜の 冷蔵庫は 空に 等しくて。

これじゃ 無理やり 光毅を 連れて来たけど

とても 看病なんか できない。


寝室のドアを 細く開けて

「買い物に 行ってくるわね。」

小さく 声を掛けたけど、光毅から 返事は なかった。


近くのスーパーで、飲み物や食料と 光毅の着替えを 買った。


戻って そっと 寝室を覗くと

光毅は さっきと 同じ姿勢で 目を閉じていた。


私は、リビングに戻り 一人で 食事を済ませた。


夕食後 ソファに 座ってみたけど。

光毅を気使い テレビを点けない部屋は 静かで。

逆に 落ち着かない。


私は ダイニングテーブルで パソコンを立ち上げた。


鈴香が 結婚した頃、私は このマンションに 引越した。


事務所に近く 広くて 使いやすい間取り。

その分 部屋代は 高いけど。


「稼げるように なったんだから、いいじゃない。ご褒美よ。」

部屋を見て 鈴香は 笑顔で そう言った。


私が 引越しをしたかった 一番の理由は

清原さんのことを 全部 消したかったから。


以前のマンションは 清原さんとの 思い出が 多過ぎた。

仕事を 辞めてまで 清原さんと 別れたけど。


同じ部屋に 住んでいると 嫌でも 清原さんのことを 思い出してしまう。

この部屋に引越して 私はやっと 清原さんから 解放された。








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