目の前の幸せから逃げないで

お昼が 近付いて 空腹を感じた私は 立ち上がる。

光毅に 消化の良い物を 食べさせないと。


煮込みうどんを 作りながら、

私は 料理が 楽しくなっていた。

誰かの為に 作る料理。

久しぶり だったから。


「うーん。何か いい匂い。」

「あっ、起きた?もう お昼よ。」

「由紀乃さん、何か 作ってくれたの?」

「うん。温かいおうどんよ。胃に優しいから 食べて。」

「ありがとう。」

光毅は 起き上って ダイニングの椅子に 座った。


「どうぞ。」

光毅の前に お椀を差し出すと

「美味しい。」

一口食べて 光毅は 嬉しそうな顔になる。

「そう、よかった。」

私も 光毅と一緒に うどんを食べる。

光毅は そんなことも 嬉しそうで 鮮やかな笑顔を 私に向ける。


「いつから 具合 悪かったの?」

光毅の視線が 眩しくて。

平静を装って 聞く私。

「昨日の朝は、少し 頭が痛かったけど。お昼 食べた後くらいかな。寒気がしてきて。」

「言ってよ。辛かったでしょう。」

「でも、仕事 終わらせたかったし。」

「そんなこと…体の方が 大事じゃない。」

「何とか できると思ったから。」

「そうね…無理して 頑張ってくれたから。私は 助かったけど。でも、もうダメよ。無理しちゃ。具合 悪い時は、遠慮しないで 休んでちょうだい。」

静かに言う私に 光毅は 寂しそうに 頷いた。

「うん。かえって 由紀乃さんに 迷惑 かけちゃったから。ごめん…」

「迷惑だなんて…そんなこと 思ってないわ。気にしないでね。」


話しながら うどんを食べていた光毅。

「ごちそう様。」

と言って 立ち上がると 食器を キッチンに運んだ。

「そこに 置いておいて。もう少し、横になった方が いいわよ。」

「もう 大丈夫だよ。」

光毅は ソファに座って 私を見つめた。









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