俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する
(翔side)
 はぁーーっと天を仰いで片手を額に当て、
深いため息を吐く。

「良かった……。」
つい、着物姿から要らぬ連想をしてしまった。見合いにでも行くのかと……。

果穂は首を傾げながら心配そうな顔で俺を見ている。

「どうか、しましたか?」

「いや、ちょっと要らぬ思い違いを…。」
俺は苦笑いしてずっと握っていた果穂の手を見つめる。
自分の指先が冷たくなっているのに気付き、パッと手を離す。

「ごめん、痛かったか?」
思わず強く握り締めていなかったかと、焦って果穂の手を取り手首を見つめる。
跡はついてないようでホッとする。

「全然、大丈夫です。でも、お時間大丈夫ですか?仕事の途中だったんじゃないんですか?」

そう、確かに仕事を中断して急いで出てきた。
今日はみかんパフェの試験販売だった為、
アンケートの回収で立ち寄ったに過ぎながった。 
cafeのオフィスでアンケートを確認しているところだった。
ふと窓を見ていたら着物姿の果穂に目が止まった。
 
まさか⁉︎と思った。
会いたいと思い過ぎて幻覚を見たのかと…

果穂に会いに行ってから1か月も経ってしまっていた。

どうにかして会いたいと、会わなければと思う気持ちが強過ぎて幻を見たのかと…。

でも、どんな姿でも果穂を見間違える訳はない。そう思った瞬間、飛び出していた。

新田と雅也も居たのに。

他に数人スタッフも…
果穂だと認識した瞬間、全て吹き飛んでしまった。
< 51 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop