ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
エントランスを出ると、

「河合さん!こっちです!」

と、坂本君が、手を挙げて、若葉を呼んだ。

坂本君はすでにタクシーを捕まえており、すぐに乗り込んだ。

「ベリーズソフト本社まで、お願いします。」

と、坂本君が言うと、タクシーの運転手がぶっきらぼうに

「はい。」

と答え、走り出した。

距離にして2駅ほどなので、仕方がない。

若葉は、資料を取り出し、脳内でプレゼンのシュミレーションを始めた。

しかし、すぐに坂本君に邪魔をされた。

「あ!ねえ、河合先輩、知ってます?最近出来たそこの高層マンション。」

坂本君は窓の外を指さしながら言った。

「え?ああ、知ってるけど?」

「なんか、東堂さん、そこの最上階に住んでるらしいですよ。さすが、億万長者ですよね。」

「へえ。」

それがどうした、と内心思いながら、適当に返事をした。

「なんでも、そこのマンションにこもりっきりで、ほとんど会社にも行ってないらしくて。
ほぼ仕事もオンラインで済ませてるらしいですよ。」

「なんでそんな個人情報知ってるのよ?」

若葉が疑いの目を向けながら聞くと、

「実は最近ベリーズソフトの子と付き合い始めて。」

と、坂本君は嬉しそうに答えた。

「はあ?取引先の会社の子には手を出すなって言ってたわよね?」

「だって、河合さん、誘っても全然相手にしてくれないし。」

「人のせいにしないでくれる?」

「すいません。」

若葉は、はあ~っとため息をついてから、

「今度は長続きするといいわね。」

と言うと、坂本君はうれしそうに、

「はい!ありがとうございます!」

と言った。それからすぐに続けて、

「佐野さん、絶対河合さん狙いだから気をつけてくださいね。」

「なに?それも彼女情報?」

「まさか!見てたら分かりますもん。」

「ばかな事言ってないで、今日は頼んだわよ。」

「はい!」

と、元気のいい返事が返ってきた。

走ること10分、タクシーはベリーズソフト本社に到着した。

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