ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
ライバル登場
「先生!来てくださったんですね(ハート)。よろしければ会場をご案内いたします(ハート)」
と、東堂の隣に立つ若葉には一切目もくれずに、その女性はうれしそうに東堂に提案した。
「いや、彼女と回るつもりだから。案内は不要です。」
と、東堂は冷たく断った。
するとその女性は、若葉にちらりと目をやると、おもむろにスーツのポケットから名刺ケースを取り出し、
一枚抜き取ると、
「私、ベリーズソフトの酒井と申します。」
と言って、若葉に丁寧に差し出した。
若葉は酒井のきれいに飾られた爪を見ながら、名刺を受け取ると、慌てて
自分のバッグから名刺を取り出し、同じように酒井に渡した。
「ルビートイズの河合と申します。」
と、挨拶すると、酒井はぶっきらぼうに、
「ああ、おもちゃ屋ね。」
と言った。
そりゃざっくり言うとおもちゃ屋かもしれないが、若葉は酒井のその言い方に棘を感じた。
酒井は、またすぐに東堂の方を向き、
「先生~(ハート)、ちょっとご相談したいことがあるんですが(ハート)」
と言うと、
「悪いが、佐野に相談してください。今日も会場に来てるはずだから。」
と、素気なく答えた。
酒井の表情があからさまに曇り、傍にいた若葉を睨みつけた。
私のせい??
若葉は、咄嗟に、
「東堂さん、お仕事なら私のことはいいので、酒井さんとお話してきてください。」
と言った。東堂は少し前かがみになり若葉の顔の横に自分の顔を近づけると、
「せっかくのデートなのにそんなこと言わないで。」
と、若葉の耳元でささやいた。
若葉はその言葉にぼっと顔が赤くなった。
2人のその様子を酒井は睨みつけながら見ていた。
と、そこへ、
「かず、来てたのか!」
と、佐野が片手を挙げながら東堂を呼んだ。
「おお。」
と、軽く手を挙げ、東堂が答えた。佐野はすぐに若葉にも気づき、
「あれ、河合さんも一緒?ならいいものやるよ。こっちに来てくれ。」
と言った。
東堂が佐野の方へ向かって歩き出し、若葉もそれについて行こうと一歩踏み出したところで、
ガッと酒井に腕を掴まれた。
「あなた、一体どういうつもり??」