ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
翌日

若葉はいつもより早めに出勤し、仕事をしていた。

早朝の静まり返った会社は、思いのほか、集中出来、仕事が捗った。

「あれ?河合さん、おはようございます。早いですね。」

と、二番目に坂本君か出勤してきた。

「ああ、おはよう。坂本君こそ早いじゃない。」

「僕は、今日ベリーズソフトさんに持っていく資料で気になってたところがあって。」

「ええ?どこどこ?」

「ああ、ちょっとまってくださいね、ここです。」

と、言って坂本君は資料を取り出すと、気になる箇所を指さした。

「ああ、ここね。私も分かりにくいと思って、添付資料増やしといたわ。はい、これ。」

と言って、若葉は追加分の資料を坂本君に渡した。
坂本君は添付資料をぱらぱらと見ながら、

「ええ?すいませんっ!!わあ、さすが!これで完璧になりました!ありがとうございます!」

と、若葉に礼を言った。

「僕、早く来た意味なくなりましたね。」

「何言ってるの。まだまだやることいっぱいあるんだから。」

「とりあえず、コーヒーでも買ってきます。」

と言って坂本君は廊下にある自動販売機にコーヒーを買いに行った。

若葉は、またPCに向かい、カタカタと作業をしていると、すぐに坂本くんが
戻ってきた。

「はい、河合さん。」

と言って、坂本君は若葉のデスクにペットボトルのコーヒーを置いた。

「ありがとう。」

と言って、若葉がキャップを開け、一口飲んだところで、

「そういえば、ネットニュース見ました?」

と、坂本君が、聞いて来た。

「ネットニュース?」

若葉はすぐにピンと来ていたが、あえて知らない振りをした。

「モデルの詩乃との溺愛スクープ写真ですよ!あれ、絶対東堂さんですよね!
いやあ、さすが、天才ゲームクリエーターであれだけイケメンならモテますよね!
うらやましい!」

「へえ~。」

と言って、若葉はあえて興味がない素振りをしてみせた。

「今日、東堂さんと会えますかねえ?あ、今はロスにいるのか。」

と、坂本は一人で盛り上がり始めた。

「坂本君、ベリーズソフトさんには仕事で行くんだから、そういう話しちゃだめよ。」

「分かってますけど、気になるなあ・・・。」

と話しているうちに、通常の出勤時間になり、ぞろぞろとフロアに他の社員たちが出勤してきた。
あちこちで

「おはようございます。」

と言う声が、増え始めた。

「はい、坂本君、その話、今日はもう禁止ね。」

「え~?気になるんだけどなあ・・・分かりました。」

と、坂本君は渋々了承した。
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