ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする

予想外の二人

県立○○総合病院

若葉は、実家には寄らず、直接母の入院している病院へ向かった。
若葉の実家からは3駅ほど離れていた。

病院の前で若葉は姉の和葉に電話をしたが、コールが鳴り続けるばかりで、
和葉が電話に出ることはなかった。

仕事中かな・・・。

若葉は電話を切ると、そのまま病院の中へ入って行った。
総合受付で母の病室を聞くと、4階を案内された。

エレベーターが4階に着き、若葉はナースステーションで、面会の受付を済ませると、
母の病室へ向かった。途中、談話室の近くで姉の和葉の声が聞こえた。

若葉は、角を曲がり談話室をちらりと覗くと、咄嗟に身体を引っ込めた。

若葉は壁に背中をぴったりと付け、今見た光景を理解しようと必死に考えを巡らせた。

若葉は、泣いている和葉とその和葉の肩に手を置き、親密な距離で和葉に話しかけている有野社長を見たのだ。
若葉はなんとか心を静め、二人の話し声に全神経を集中させた。

「心配しなくていいから。悪いようにはしないよ。出来るだけのことはさせてもらうから。」

「はい。ありがとうございます。」

「じゃあ、また来るから。」

「今日は色々とありがとうございました。」

若葉は慌てて、女子トイレに駆け込んんだ。

有野社長は談話室から出てくると、女子トイレの前を通って、エレベーターがある方へ歩いて行った。

若葉は

「ふぅ~。」

と、息を吐いた。

危なかった。もう少しで鉢合わせするところだった。

若葉は気持ちを切り替え、姉のいる談話室へ向かった。

「お姉ちゃん。」

若葉が和葉に声を掛けると、和葉はさっと涙をぬぐい、何事もなかったかのように、

「若葉、来てくれたのね。」

と、返事をした。

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