先輩、お久しぶりです

先輩は少し考えたあと、頬杖をついたまま流し目で私をみつめた。
見慣れたはずだと思ってたけど、イケメンの何気ない仕草というだけで心臓が跳ね上がる。


そんな彼の視線とともに、さらに心臓が破裂しそうなことを言った。


「俺は運命って言葉で片付けることはしたくない。そんな不確実なもんじゃなく、もっと現実的に千春と歩んでいきたいと思ってるから」


照れるでもなく平然と言ってのける昂良先輩の横顔を見ながら、私と同じことを考えてくれていたという喜びでいっぱいになり、これ以上ないほど脈が跳ね上がった。


「きゃー!藤井さん、ちょっ!それって若宮さんへのプロポーズってことですか!?」

「……へ?」


私以外の三人は照れくさくなるようなセリフを聞いて唖然としているかと思いきや、予想に反して興奮していた。
言った本人はそんなことは意図していなかったようで、困惑した表情になっている。


単に惚気を聞かせてたとも言えるけど、村元さんの言葉に冷静になったのか耳まで真っ赤にして動揺していた。


「え?っな!?ーーえ!?」


さっきまで上から目線で語っていたのに、今度はやけに挙動不審で拳を口に当て隠すように体ごと横に向けた。
そのタイミングでまた私と目が合い、二人して照れる。


もう居た堪れない……。


「藤井さぁ、付き合ってまだ日も浅いだろうにちょっと焦りすぎじゃないか?そんな大事なこと蕎麦啜りながら聞く話じゃないだろ~。なぁ千春ちゃん」


的場さんがニヤけた顔つきで冷やかし交じりの口調で言うから、余計に恥ずかしくなり同じようにニヤけた顔で笑って誤魔化してしまった。


「う、うるせーよ。本番はこんなとこで言うわけねーだろ」


ほん……本番!?

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